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特集

シリーズ
地球と、生きる
カフカス横断鉄道

August 2010

文=ブレット・フォレスト 写真=アレックス・ウェッブ

ゼルバイジャンとトルコを結ぶ新しい鉄道の建設が進んでいる。新しい交易路の開通は、周辺地域に何をもたらすことになるか。

 ダイナマイトを積んだトラックは、トルコの首都アンカラから山道をじわじわと進んで、2日がかりで北東部の国境に近い山中にあるこの工事現場にたどりつく。この美しい、峻厳な風景のなかを、もうじき列車が走る。

 雪のなか、現場監督のアルスラン・ウスタエルがトラックを待っていた。ここでは夜間はマイナス40℃近くまで気温が下がる。「つばを吐けば、地面に落ちないうちに凍り付きますよ」。ウスタエルは冗談を言って、にやりとした。

 30歳の若い現場監督にとって、硬い火山岩の山肌にトンネルを開通させるこの工事は、技術者としての将来がかかった大仕事だ。なにしろ、これは「バクー・トビリシ・カルス(BTK)鉄道」建設計画の一環なのである。BTK鉄道は、豊かな石油が眠るカスピ海沿岸地域とトルコ、さらには欧州を結ぶ「鉄のシルクロード」として期待を集める大プロジェクトだ。

 黒海とカスピ海に挟まれた幅1200キロほどの陸域は、そこにそびえる山脈(ウスタエルの工事現場もその山中にある)の名にちなんでカフカス地方と呼ばれる。帝政ロシアの支配下に収まる以前から、カフカス地方は欧州とアジアを結ぶ交易の中継地として栄え、旧シルクロードもここを通過していた。

 古来、黒海からカスピ海へ物資を輸送する手段はただ一つしかなかった。黒海北部の内海アゾフ海からドン川を船でさかのぼり、陸上を移動した後、ボルガ川を下ってカスピ海に出る方法だ。19世紀になってロシアがこの地方に鉄道を敷設してようやく、より直線的なルートで東西が結ばれるようになった。

鉄道建設、カフカスの思惑

 「鉄のシルクロード」が完成すれば、カフカスの新たな歴史が幕を開ける。1991年にソ連が崩壊すると、カフカス地方南部には新たな独立国グルジア、アルメニア、アゼルバイジャンが誕生した。そしてカスピ海に眠る膨大な石油・天然ガスを南カフカス経由で欧州市場に輸送しようと、パイプラインの建設ラッシュが起きた。現在、それらはすでに稼働している。

 BTK鉄道ができれば、南カフカスを経由して欧州の物資を東に、石油製品を西にという東西貿易に拍車がかかるというのが各国の思惑だ。2012年に全区間が完成すれば、アゼルバイジャンの首都バクーからグルジアの首都トビリシを経て、カフカスの南西端にあるトルコの都市カルスまでが鉄道で結ばれる。

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