この記事は雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2024年5月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。
変幻自在に姿を変え、道具を使い、献身的に子の世話をするタコ。その驚きの能力や知性の秘密を探る。
視点を変える
賢く適応力に優れたタコ。最近の研究が、私たちの見方を変えつつある。
丸い袋のような体に付いた8本の腕をくねらせ、墨を吐く生き物。そんなイメージのあるタコが、北欧の海の怪物クラーケンからアニメ映画『リトル・マーメイド』の魔女アースラまで、さまざまな物語に着想を与えてきたのも不思議ではない。だが本当のタコは、賢く、好奇心旺盛で、個性あふれる生き物だ。写真家のデビッド・リトシュワガーは、米ウッズホール海洋生物学研究所のロジャー・ハンロンの研究室や、イタリアのフェデリコ2世ナポリ大学の動物学教授アナ・ディ・コズモの研究室を訪れ、タコが皮膚の色や質感を変える様子や、餌を選ぶ様子などを何週間もかけて撮影した。およそ300種にのぼるタコの研究は、ヒトの脳の進化の起源について理解し、私たちとは異質の知性について想像をめぐらせるうえで役に立つ。