美しい山々を守るために、山間の村々が動き出している。東アルプス山脈に位置する標高の高い村々は、世界中の冒険好きな旅行者たちを呼び込もうと、2008年から一丸となってきた。1年を通してハイキングやサイクリング、登山が楽しめるし、冬にはクロスカントリー・スキーやアイスクライミングもできるのが売りだ。
「ベルクシュタイガードルファー」(登山の村々)と呼ばれる、この山村ネットワークには、オーストリア西部のチロル州やケルンテン州を中心に、スイスやドイツ、イタリア、スロベニアの36の村が参加している。ベルクシュタイガードルファーは、山岳地帯の美しい景観を乱開発から守る役割を果たすと同時に、村の文化や伝統が失われるのを防いでもいる。山村ネットワークはスキーロッジの無秩序な建設やケーブルカー敷設といった大規模な観光開発プロジェクトに反対し、環境にやさしく、持続可能な山岳観光を重視している。
「私たちは無理に背伸びをするつもりはありません。ここでしか味わえない正真正銘の山の体験をしたい人たちにアピールしたいんです」と話すのは、オーストリア山岳協会のバーバラ・ライトラー氏だ。ベルクシュタイガードルファーのウェブサイトでは、ホームステイできる農家に関する情報や、山歩きで疲れた後に食べたい、地元の伝統料理などが紹介されている。
ライトラー氏がお気に入りの村は、オーストリアのゲゾイゼ国立公園に位置するヨーンスバッハだ。景色がドラマチックだという。「川に沿ってエンス渓谷を進んでいくと、突然、ゲゾイゼ山地の峰々が目に飛び込んでくるんです。まるで、別世界に紛れ込んだ感じがします」
※「いつか訪れたい旅先25 2023年版」ほか、旅の記事は「旅・文化の記事一覧」でまとめてご覧いただけます。
おすすめ関連書籍
歴史や文化を感じる旅から大自然を味わう旅まで、世界各地約100カ所の定番観光地を美しい写真で巡る。それぞれの場所での旅の楽しみ方を、「文化に触れる」「身体を動かす」「自分を見直す」そして「地域活動に参加する」の4つのテーマに分けて紹介。
定価:1,540円(税込)